2026年は7月に熊本地震、8月には千葉県で記録的な豪雨と、大きな災害が相次ぎました。9月1日は「防災の日」。あなたのオフィスの防災対策は「形だけ」になっていませんか?防災対策は、実際の災害時に十分機能しないと意味がなく、定期的な見直しが必須です。今回は、今日からできる「家具固定」「レイアウト変更」をはじめとしたオフィスの防災対策のポイントを、オフィス家具専門店がプロの視点から解説します。
「防災=地震」だと思っていませんか?
災害は地震だけではありません。地震のほか、台風や豪雨などによる水害、火山噴火、大雪など日本では様々な自然災害によって大きな被害を受ける可能性があります。加えて、災害をきっかけにして発生する二次災害・二次被害への対策も必要です。
近年では火災・水害にも注意が必要
例えば、地震では火災や避難経路の遮断、台風や豪雨では浸水や土砂災害などが発生することがあり、家具の固定だけでは不十分です。避難方法や備蓄、設備の安全対策なども含めて対策を考える必要があります。
実際に、2026年8月には線状降水帯の影響で千葉県内に記録的な大雨がもたらされ(令和8年8月千葉豪雨)、広範囲で道路の冠水や住宅の浸水被害が発生しました。ある調査※では、浸水被害に遭った方の約半数が、国や自治体が指定する浸水想定区域の"外"で被災していたことも明らかになっています。ハザードマップ上のリスクが低いエリアであっても、決して油断はできません。
※ウェザーニュース(2026.08.15)
https://weathernews.jp/news/202608/140171/
意外と活火山の多い日本。火山噴火にも要注意
また、火山噴火では、降灰する火山灰にガラス質の粒子が含まれており、電子機器類の故障や健康被害への懸念があるため、灰を室内に入れない対策が求められます。
なお、いずれの災害も、電気やガス、水道、通信といったライフラインの寸断や、交通や物流の停止が生じる可能性があります。オフィス内だけでなく、外部環境への影響も考慮することも防災の重要なポイントです。
オフィスには、自然災害のほかにも、電気火災のリスクがあります。バッテリーの不適切な取扱いや容量を上回るたこ足配線による発熱・発火、サーバールームでの発火などへの対策も、防災対策に盛り込む必要があります。
【室内編】家具・レイアウトで見落としがちな危険なポイントと対策
災害が発生した場合にオフィスへの被害を最小限に抑えるには、家具の転倒防止に加え、備品・設備の安全対策、避難を妨げないようにレイアウトを工夫することがポイントです。
【家具】転倒防止グッズ・ラッチを活用
地震で大きく揺れると、家具の転倒によってケガをしたり、避難動線が遮断されたりするおそれがあります。家具は連結し、固定器具を用いて壁や床に固定しましょう。
転倒防止対策の重要性は分かっていても、実際に地震のニュースや映像を見てみると、今なお家具や什器が固定されずに転倒しているオフィスや店舗が数多く見受けられます。
「固定の重要性はわかっているけれど、なんとなく後回しになっている」というケースも少なくないはずです。転倒防止対策は平時でなければできません。まだ対策していないところは今のうちに対応しておきましょう。
また、一度取り組んで終わりではなく、過去に固定していても今までの地震によって固定が甘くなってしまっている可能性もあります。定期的にチェックし、抜け漏れがないかを改めて見直しましょう。
直接固定が難しい賃貸オフィスでは、壁や床を傷つけない粘着型や突っ張り型の固定器具、転倒防止マット、粘着耐震マットなどがおすすめです。粘着耐震マットは、転倒しやすいテレビやPCモニターの落下防止にも使えます。
また、揺れにより収納家具の扉や引き出しが飛び出して、動線を妨げる可能性もあります。耐震ラッチや飛び出し防止用のロックを付けておくことをおすすめします。
【設備・備品】危険ゾーンのチェックと対策
災害対策として収納家具は固定しているというオフィスでも、設備や備品については見落としがちで、完全に対策できていないかもしれません。主な危険ゾーンと、対策方法をご紹介します。
・コピー機:重量があるため、揺れによって転倒したり、大きく移動したりして危険です。床や壁に固定するか、キャスターにストッパーを付けて暴走を防ぎます。
・窓際:家具類や重量物を置くと、移動や転倒により、窓ガラスを割るおそれがあります。できる限り窓から離し、背の低い家具であっても床などに固定します。
・高所にある共有物:落下の危険性があるため、ものを置かないことが原則です。置き場所を変えるか、やむを得ない場合には粘着マットなどで落下を防ぎます。オープン棚には、飛び出しを防ぐ落下防止テープが有効です。
・コンセント回り:トラッキング火災の原因となるホコリが溜まらないように、定期的にチェック・清掃します。タップ類を使用している場合は、定格以上の電気製品をつないでいないか、コードやタップが発熱していないかを確認しましょう。電源コードを束ねたまま使用していないか、家具などの下敷きになっていないかもチェックしてください。
・浸水リスクのある場所:地下や1階など、浸水のおそれがある場所に重要な設備や水に弱い備品を置いていないか確認します。
特にサーバーや電源設備、書類、備蓄品などは、できるだけ浸水の影響を受けにくい場所に保管しましょう。必要に応じて、止水板や簡易的な浸水対策用品を準備しておくことも有効です。
【レイアウト】避難動線と安全スペースの確保
メインの避難通路は、人が2人通行できる幅1.2m以上を確保し、家具が転倒しても通路をふさがないレイアウトになっているか確認しましょう。また、オフィス内で退避できる、安全スペースを確保しておくことをおすすめします。
意外に見落とししやすいのが、デスクの配置方向です。背中合わせになる配置では、移動時に後ろの人とぶつかったり、避難動線を妨げたりする可能性が高くなるため、十分なスペースを確保してください。
【屋外編】オフィスの外も対策を忘れずに
災害対策が必要なのは、オフィス内だけではありません。災害時には、移動や帰宅が困難になることもあるため、オフィスの外の対策も忘れずに行いましょう。
社用車の管理
社用車は、災害時にすぐ使えるよう、燃料の残量や、鍵の管理方法などを確認しておきます。
また、車は移動手段や一時的な退避場所としても利用できる一方、車の使用中に災害に遭う可能性もあります。飲料水、非常食、携帯トイレ、ライトなどの備蓄品を備えておきましょう。
そのほか、閉じ込めに備え、脱出用ハンマーやホイッスルも必要です。市販の車載用の防災セットを活用するのもよいでしょう。
付近の宿泊施設の確認
帰宅困難者対策として、付近に利用できる宿泊施設も確認しておきましょう。ただし、被害状況によっては利用できるとは限らないため、自治体の一時滞在施設も把握しておきます。
【安否確認編】連絡手段の確認も重要
災害発生時に社内でどのように連絡を取るか、ルールを確認、周知することも大切です。
災害用の安否確認アプリを使用する場合には、アプリがインストールされているか、機能するかを確認しておきましょう。
なお、災害時には電話やインターネットが使用できなくなる可能性もあるため、複数の連絡手段を把握しておく必要があります。
特に音声通話は規制がかかりやすいため、影響を受けにくいSNSのオープンチャットを事前に構築するのもよいでしょう。
ちなみに私は、東日本大震災の時、電話回線がまるで繋がらなかったことを鮮明に記憶しています。複数の連絡手段をもっておくこと、本当に大事です…!
社内備蓄:何日分をどこに保管する?
社内備蓄は、災害発生直後(1日間)と、帰宅が難しい場合に社内待機する期間(3日間が目安)に分けて準備する必要があります。
災害発生直後に必要な備品は、1人1ボックスを用意し、すぐに持ち出せるところに保管する必要があります。デスク周りやロッカーを使用するほか、紙を保管していた資料庫を保管庫にするのもよいでしょう。
社内待機に必要な備蓄は、会議室の空きスペースや倉庫、フリースペースの一角などに保管します。1ヵ所にまとめると、取り出せなくなる可能性もあるため、できるだけ分散して保管します。水害に備え、浸水の可能性がある場所への保管は避けましょう。
3日間に必要な備蓄の目安は、従業員1人あたり水9L、食料は9食分。食料は調理の必要がない乾パンやアルファ米のほか、缶詰やレトルト、栄養補助食品などを用意します。また、オフィスに留まる際には、毛布や保温シート、簡易トイレ、衛生用品なども必要です。簡易トイレは15回分程度を目安にするとよいでしょう。
災害時には自社の従業員以外にも、取引先が来社している可能性もあります。また、地域でお困りの方にも対応できるよう、従業員数よりも余裕を持って準備しておくのが望ましいです。
なお、食品には賞味期限があります。定期的にチェックし、古くなったものは入れ替えを行いましょう。
「これが助かった/これで困った」帰宅困難を経験した社員のホンネ
実際に震災に遭った際に、Garageのスタッフが体験したホンネをご紹介します。
「電車が止まって帰宅できないということが分かった瞬間に、家族の安否を調べて報告することと、歩いて帰宅するか、会社に泊まるかを当時の上司にすぐ確認するよう言われた。自分は家が遠かったので、会社に泊まることを選択。また、家族の安否をすぐ確認させてもらえたので、大きなパニックにならず、少し安心できたことを覚えています。」
「大きな揺れがあった際に、ドア近くに立っていた私に”ドア開けて!”と指示を出した上司の判断力が秀逸でした。後日ドアを閉めようと思ったらドアの噛み合わせが悪く開かなかったので、もしあの時開けていなかったら…と思うとゾッとしますね…。身の安全はもちろん大事なのですが、その後の行動や安全まで瞬時に判断する重要性を肌で感じました…」
「チームに先陣を切って、その日の食事の手配や翌日の食料の確保に動いてくださった先輩がいた。おかげで、食べるものに困らず、オフィスに1日宿泊。有事の状況で冷静に先を見て安全と安心を確保して頂けたのが、今思うと本当に助かりました。」
帰宅困難時には、会社に安心して待機できることが本当に大切なことがわかります。備蓄だけでなく、適切な災害対応が行えることが、従業員の強い支えとなります。
【今すぐできる】今日から始める防災アクション
防災は、できるだけ早く始めることが大切です。今すぐ取り組める防災アクションについて、モノ・人・知識に分けてご紹介します。
①物理的な対策
オフィスにおいてまず取り組みたいことは、デスク周りの片付けです。災害時のけがや避難の遅れを防ぐため、「足元に荷物を置かない」「机上に書類や物品を積み上げない」ことを意識付けます。
次に、家具の固定状況の確認や避難経路の確保を行いましょう。備蓄品については、オフィス内のどこに何がどれだけあるのかを確認し、食品の賞味期限を確認しておきます。
オフィスやオフィス周囲の情報確認も大切です。前述のとおり、浸水想定区域の"外"で被災するケースも実際に起きています。水害への備えとして、オフィス周辺のハザードマップを確認し、「浸水した場合、どこから水が入ってくる可能性があるか」「重要な設備や備品が浸水しないか」をチェックしてみましょう。
②人的環境の整備
災害発生時の役割分担として、防災の責任者を任命し、チームを組織して、スムーズな対応が取れるようにしておきます。
また、社内コミュニケーションについてもルール化し、安否確認システムのテストや、緊急連絡網のアップデートを行っておきましょう。
③防災知識の習得
災害から身を守るには、正しい知識が必要です。災害が発生した際に、想定される1次被害・2次被害の内容や、どのような対応を取るべきかを学び、整理しておきましょう。
また、便利な防災アイテムや、防災に関する知識を身に付けておくこともおすすめです。
ファシル株式会社の防災ポーチ「MUST HAVE」は、携帯トイレやホイッスル、アルミポンチョ、防災カードなどをコンパクトに持ち歩けるセット。Garageでは、6点セットのSサイズと、9点セットのMサイズ、10点セットのLサイズを取り扱っています。
災害時の停電対策には、ポータブル電源(キャンプ用電源)が便利です。大容量のバッテリーを搭載している電気自動車(EV)は、非常時の電源としても活用できることも、覚えておきましょう。
災害時に知っておくと役立つ情報は、内閣府防災や警視庁警備部災害対策課など、公的機関のXアカウントからも発信されているので、チェックしてみてください。
オフィスの防災対策は急務
オフィスの防災対策は、従業員の安全を守るために重要です。加えて東京都をはじめ多くの自治体では、事業者に従業員の安全確保や一斉帰宅の抑制、3日分の水・食料などの備蓄に努めることを求めています。
防災対策は一度実施すれば終わりではありません。人員の増減やオフィスのレイアウト変更などによって、必要な備蓄量やオフィス内の危険箇所は変化します。
防災の日を機に、現在の防災対策が十分であるか、改めて見直してみてください。